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#13 水鏡2 [デムピアス・3年前]

posted by GEM at 2005年08月31日 12:51

 僕はセイリュウに、事の始まりであるルアスの噂から始まってスオミの水詠みやミルレスでの御神託について、ミュレカン神がこのまま隠れたままだと善悪のバランスが崩れてマイソシアが混乱に陥る危険があることについて、ミュレカン神を何らかの方法で御座に戻したときに『死神』が同時に現れるらしいことについて、話した。

「ルケシオンの首脳部にも当然この件の連絡と協力要請があった。僕はこの都市の「裏の顔」でね、僕のところにも話が報告されたよ。そしてセオ神の御神託を聞いて、『水鏡』という言葉にピンと来た。僕がデムピアスの名と共にここを受け継いだとき、ここには『水鏡』があるって聞いていたからね」
 もしも僕がデムピアスでなければ、他のみんなと同じように御神託の『水鏡』のことをスオミの水詠みだと考えていただろう。スオミの水詠みは、風が吹き込まないように工夫された聖廟の巨大な水槽にニミュ湖の水を引いてあり、その聖廟には全方向から光が差し込むので、水面はまさにマイソシア一の水鏡だと言われていた。
「つまり、そのセオの言う『水鏡』というのがここの『水鏡』だと思うわけね?」
「……そうなんだが、違うのかい? まぁ確かに、君には逢えたが『水鏡』なんてどこにもないんだけど」
「ふ~ん。しかし、貴方達の伝承って適当なのね。『水鏡』について全然正しく伝わっていないわ。もしかして貴方の言うところの二代目がわざと伝えなかったのかしら?」
「さあ? わからないね。逢った事ないから」
 セイリュウは何を当たり前のことを言っているんだと言わんばかりに僕をまじまじと見つめ返す。言い回し系の冗談はいまいち通用しないのかな? それともまだ警戒されているのか、あるいは見下されているのか……。警戒していると言う意味では、僕も右手にパンテラ改を装備したままだが。

 セイリュウが話を続けた。
「ところで、セオは『死と恐怖を統べる神』とは言っているけど『死神』とは言っていないわよね。あなたはなぜそれを死神だと思ったの? 死神について何か知っているの?」
「いや、僕達の世界では死神という神はおとぎ話程度にしか認識していない。ミュレカン神は死を司る神だと言われているんだけど、御神託の文脈から考えて多分ミュレカン神のことではないだろう。そして恐怖を司る神も別にいて、これはヘックスタ神のこと。つまり死と恐怖の両方を統べる神っていうのはいないんだ。で、この件の調査を指揮しているリーゼッタはまぁそれらしい響きってことで『死神』と表現しただけだと思うよ。僕もそれのことを『死神』と言われて特に違和感は持っていなかったけどね」
「なるほど。不思議なこともあるものね。そのリーゼッタ? という人間、いい勘しているわ。確かに私達の神界において死神と呼ばれる連中がいる。ただ、死神と言うときは特定の一人の神を指す訳じゃなくって死神に属する神はみんな死神と言われる。その中の誰のことをセオが神託で触れているのかは分からないわけね」
「それはつまり……御信託の『死と恐怖を統べる神』というのは君達の世界に存在する死神達の誰かっていうことなのか? もしかして心当たりでもあるのかい?」
「さぁ? 分からないわ。聞いた限りではその可能性は高いと思うけど。ただあなたが死神って言ったから、死神について知っているのかと思って聞いただけよ」
「知っているわけではない、と言うべきだろうね。死神ってのは……そんなに何人もいるものなのかい?」
「そうね、死神というより、あらゆる神が星の数ほどいるわ。あなた達は善と悪という独自の体系を作り出した為に、結果的に今のようにセオミュレカンを神に据えることになった。でも、別の空間では私が主神だし、別の空間では複数の神が主神として据えられている。完全に単一神を神と据えていて他の神が一切関知していない空間もあるし私達神界とのつながりが全くない空間もたくさんあるの。魔界の者に魅入られ魔神を神に据えているところもある。ちなみに、私は神界の東方の守護だって言ったけど、別の空間では私は性と愛の神なのよ」
「……んー……。ってことはなにかい? 別の空間では別の人間が生活しているのかい?」
「そうよ。人間とは限らないけどね。こういったことは私たち神界の神と直接契約することを許された賢者なんだからちゃんと押さえておきなさいね」
「他の空間でも賢者がいるのかな?」
「空間によるわね。賢者じゃなく使者と呼ばれ、空間にただ一人しかいない場合もある。賢者や使者が神格を与えられている場合もある。すべての生き物が賢者として生きている空間だってあるし、賢者が乱立しちゃって混乱しているところもあるわ。ついでに言うと、あなた達は最高神の姿形を与えられたけど、私を主神としている世界の住人の姿形はあなたたちとは全く違うわ」
「……セイリュウ、すごく興味が尽きない話だけど、もうよく分からなくなってきた。また次の機会に落ち着いて聞かせてもらうことにするよ。とりあえず今僕が持ってきた内容に話を戻そう」
「そうね。今みたいな話は、まずは他の賢者に会っていろいろと話を聞いてきなさい。他の賢者がどこまで知っているかは知らないけどね」

 全くとんでもない話が次から次へと出てくる……僕は賢者なんかどうでもいいんだけど、セイリュウの話を全部聞けばいやでも賢者になってしまいそうだ。二代目はいったいなぜ賢者なんてものに縁があったのだろうか? 初代から皆海賊王なのは間違いない話だと思うのだが……
 考え出すときりがない。とにかく話を戻さないと。
「ところで、『水鏡』なんだけど……どこにあるんだい?」
「そうね。水鏡を見せてあげるわ。ただし、これは私のもの。セオが『水鏡に写りしは我が言霊……』なんて言ったらしいけど、セオごときが『私の水鏡』にどうこうするなんてありえないわよ? 期待したものが見れなくてもがっかりしないでね。滅多に見れないものなんだから」
 セオ神をセオごときって言うのか……。僕が知る限りセオ神は最高神だったんだが。
「あぁ、わかってる」
 セイリュウは両手を天にかざした。今まではセイリュウは両手を互いの袖に入れていて分からなかったが、右手には丸い水晶のような玉を持っている。そして両手でその玉を包み込むように持ち上げると、その玉をふわりと腰の辺りまで降ろす。
 ほんとに一瞬、耳鳴りのような音がして視界から色が失われたような感覚を覚える。そして次の瞬間、突然、僕とセイリュウの間に水の膜が現れた。いや、現われたと言うより、すでにそこにあった。
「……こ……れは……!!」

 こんな光景は見たことがない!

 上のほう、ずっと空の方までこの水の膜が続いている。左右も地平線の方までまっすぐに水の膜がある。しかも、この水は流体であることが分かる程度に波打っているが地面に流れることなくそのまま留まっている。波のない海面を三十センチほど薄く切り出して垂直にして見ているといえばいいだろうか。これは水鏡というより水のカーテンだ。
 水のカーテンの向こうにいるセイリュウが満足げに語った。
「私の次元で見れば小さな手鏡なんだけどね。こちらの次元ではこの形じゃないと実体化出来ないのよ。どう?」
「……信じられない……。なんて素晴らしい、幻想的な光景だ」
「あら、うれしいこと言ってくれるわね。そうよ、私の自慢の鏡よ。この鏡は私の次元を切り出したものなの」
 僕はこの水のカーテンのあまりの美しさと神々しさに吸い寄せられそうになった。まるで我を失ったかのように、一歩一歩……
 突然、水鏡の向こうにいたはずのセイリュウが僕の前に現れた。水のカーテンには全く穴などないのに一体どうやってこちらに来たのか不思議だが。
「だめよ。この水鏡に触れると鏡の次元に閉じ込められるわよ?」
「……?!」
 ふと我に返った。目の前に来たセイリュウはどこか子供っぽい笑みを浮かべている。そして僕の左に立ち一緒に鏡を見つめた。
 僕は続けた。
「あ……あぁ。しかしこれは、吸い寄せられそうだよ……。セイリュウ、これは僕には果てしなく大きく見えるんだが?」
「そうでしょうね。この次元で実体化するということは果てなんてないわ」
「ということは、この水鏡はマイソシアでも見えているのかい?」
「それはありえないわ。次元は同じだけど空間は共有してないもの」
「……は?」
 さっきから驚きの連続だが、思わずすっとんきょうな声を出してしまった。それはつまり……僕はマイソシアにいるわけじゃないのか??
「なんだか面白くなってきたわ。だって、ほんとに何も知らないんですもの。いい? 貴方がいるこの場所は貴方が元々いた場所と次元構造は同じ。でも、全く別の空間よ。ここに歩いてくることなんて出来ないし、歩いて貴方の元の世界に戻ることも出来ない」
 だからこの島は今までどれだけ探しても見つからなかったのか!
「きっと知らないだろうから教えてあげる。貴方がこの島の海岸だと思っている場所は、貴方がこの空間で存在できる境界線よ。その先はなんとなく海に見えるでしょうけど、実際には空間と次元の狭間。落ちたらどこに行くか分からないわよ? 次元も空間も流れの中にあるものなの」
「確かに、受け継いだときに『海には絶対に飛び込むな』とは言われていたが。しかし、次元とか空間とか、一体どうなっているのかよくわからないな」
「そうでしょうね。各空間は無限の広がりを持つ、そして各空間はそれぞれ干渉しない。この次元で見てこの次元で考える限り理解できないわよ。空の向こうの果てなんて考えたこともないでしょう?」
 なにかとてつもないことを聞いている気がする。ほとんどよく分かってないんだが、なんというべきか……これは神の領域の話だ。
「で、デムピアス。お望みの『水鏡』から何か分かったかしら?」
「あぁ、そうだった。触れることは出来ないのだから見るしかないが、これは『水鏡』という名にしては特に何かが映っているわけじゃない。僕の姿も映ってないしね。一体何を写すものなんだい?」
「この次元では何も写さないわよ。というより写ってはいるけど写っているのは私の次元だもの。貴方には決して見ることが出来ないわ」
「そうか……ん? セイリュウ。なにか、人のようなものが見えるんだが、気のせいだろうか?」
「……」
 僕はずっと水鏡に奪われていた視線をセイリュウに移した。
「なんてこと……」
 何か起こっているらしいことはその表情を見ればわかる。
「どうしたんだい?」
「……今回だけ特別に見せてあげるわ。この次元でも分かりやすいようにはっきり写してあげる」

 セイリュウがそういった瞬間、水鏡に見えたような気がしていた人の形が、はっきりとした像としての人の姿となって写った。
 その姿は腰巻と頭に月桂樹、腕と首に装飾がある以外何も着ていない男性の立つ姿だった。その立ち姿は、筋肉の塊と言うのではない、鍛えられた黒い鋼のような印象を受ける。頭はスキンヘッド。修行僧のようだな。背は僕より少し大きいぐらいか。なぜか、何処かで逢ったような気がするんだが……。厳しい表情でこちらに目を向けている。こちらというより、セイリュウを、か?
 男はおもむろに片膝をつき頭を深々と下げなにかを話しているようだ。だがこちらには何も聞こえてこない。
「いきなり話しかけても聞こえないわよ。仕方ないわね、かなり骨が折れることなんだけど貴方の言葉を鏡の次元から中継してあげるわ……。さぁ、話しなさい。どういうこと?」
 セイリュウは鏡の中の男に向かって言った。すると今度は男の声がはっきりと聞こえてきた。
セイリュウ様、ご助力いただき感謝いたします」
「そんなことはいいの。それより貴方、なぜそこにいるの? この鏡の中は私達の次元を切り出したもの。貴方のような次元の者が立ち入ることなど出来ないはずよ」
「おっしゃるとおりです。私はセイリュウ様の下の世界に位置する者。本来ここにいてはならぬ身です」
 僕はたまらず、セイリュウに尋ねた。
「えっと、もしよかったら紹介してくれないか?」
「あら。この顔を見ても分からないなんて、不信心者ね。ミュレカンよ。貴方達の世界の神様の一人でしょう?」
「なんだって!?」
 まさか……そんなことが……。
 この目で直接ミュレカン神を見ることになるなんて……!
「そこの賢者よ、汝の横にいますお方は、汝らに分かりよく言うならば我ら神族のさらに上位にあられる、我らの神たるお方だ。お咎めがないようであれば私の諭すところではないが、いくら五賢者が一人とはいえあまり無礼のないように。せめてその得物を収めよ」
 まぁ、セイリュウはかなりの存在だろうとは察しもついていたが、こうしてミュレカン神に直接言われてしまうと、これはこれで……。それにしても、ミュレカン神も賢者の事を知っている……?

 僕は右手のパンテラ改を義手に納めた。そして、セイリュウに向き直り、ミュレカン神と同じく片膝をついた。
セイリュウ様、知らなかったとはいえ、数々のご無礼、お許しください」
 一応、言っておいたほうがいいだろう。
「なにをいまさら……」
 同感だ。
「いちいち礼儀なんて求めないわ。ミュレカン。貴方も立ちなさい」
 言われて、僕も水鏡の中のミュレカン神も立ち上がった。
「で、ミュレカン。そこで何してるわけ?」
「はい。私は恐れながらセイリュウ様と同じ神界におられる死神のお一人、デス様にここに閉じ込められたようです」
デスが? ……そういえばあなたはデスと契約をしていたわね。でも何故かしら。なにか悪いことでもしたの?」
「滅相もございません」
「本当に? いくら死と恐怖を統べる死神達とは言え、悪魔とか魔神じゃないんだから何もしていない者を理不尽に閉じ込めたりしないはずよ? あんなのでも立派な真・神界の神なんだから」
「ですが、誓って申し上げます。私は身に覚えがございません」
「そう……。でも、デスが貴方をそこに封じたのであれば、普通に考えればデスしかあなたをそこから出せないわ」
「はい。ですが、今は鏡が人の次元に実体化し、鏡の次元にも歪が生じております。私はこの歪の乗じてここを出られないかと思いましたが自力では全く無理でした。セイリュウ様、もしかして今なら私を出していただくことは出来ませんでしょうか?」
「出来ないわね。私たちのレベルの封印よ。歪が生じたぐらいで解けるような安っぽいものだと思う?」
 セイリュウが間髪いれずに答える。あっさりだ。
「そうですか……実は、辛うじて私と対をなすセオとどうするべきか話し合ったのです」
「まぁ、セオも成長したわね。上位次元に閉じ込められた貴方と話をするなんて」
「かなり消耗したようでしたが、なんとかがんばってもらいました」
「そうなの。で、セオとどうすることにしたの?」

「少し長くなりますが……」
「いいわ。続けて」
「はい。少し前に……あ、賢者もいますので人の単位でいいますと十五日ほど前です。何の前触れもなくデス様が私の前に姿をお見せになり、挨拶をする間もなく、問答無用で私をここに封印してしまいました。この封印された空間のほうから他の次元・空間に対して連絡をすることは出来ませんので助けを求めることも出来ず途方に暮れておりました。しかし、セオはかなりの消耗を覚悟で私の居場所を突き止め連絡をしてきてくれました。私がいきなりデス様に封印されてしまったことを告げると、セオデス様に直接お願いできる方法を模索しました。ですが、私以外にはデス様と契約を結んでいるものはおりません。誰かが時間を掛けてデス様と契約を行えば直接お願いすることも出来ますが、そのような時間を掛けてしまうと契約が終わる頃にはマイソシアは崩壊しているでしょう。それに、仮にすぐにデス様と契約できたとしても、今回のようにいきなり私を封印してしまうような状態ですから果たして話を聞いてくださるものかもわかりません」
 僕は素直に今の話を自分の知っている情報と照らし合わせてみた。
ミュレカン様、今のミュレカン様が封印された状態がすなわちスオミの水詠みの『セオ神の力の及ばぬ場所』なのですか?」
「そういう捉え方もできるだろうがスオミの占いは我々も関知しないものゆえ断言は出来ん。だが、私の考えとしてはおそらくデス様のことも指しているのではないかな。デス様やセイリュウ様のいらっしゃる神界には当然私やセオでは力が及ばないからな。もちろん、今私がいる場所にもセオの力は及ばないが。辛うじて会話が出来た程度だ」
「なるほど。では、ルアスにて流れた噂こそがミュレカン神が今のように封印されたことを指しているのでしょうね」
「うむ。その噂のこともセオから聞いている。その通りだと思う。ただ、その噂を誰が流したのかまでは知らぬが。セオも一体なぜ人の世界に易々と噂が流れたのか分からんと言っていたよ。私が封じられてすぐに噂が流れたらしいからな」
「……」
 つまり、神界のデスミュレカンをこの鏡に封印した。そして、誰かが噂を流した。一体誰が何のために、どのような根拠をもってあの噂を流したのか。結局謎は謎を呼ぶのだな。
 ミュレカンは話を続けた。
「私は封じられているためセオから聞いたことですが、私の空席を巡ってセオ以下の他の者達で当面の対策と今後をどうするかを検討したそうです。そして、とりあえずの応急対策としてセオが影響力を落とすことで善の力が過剰にならぬようにしました。ですが、私がこのまま帰らなければマイソシアの死者の魂が処理されず魂の転生や昇華などが止まってしまいます。そこで、まずは私が何とか帰ることが出来るように考えました。それでも私が帰る事が出来なければヘックスタが私の座を掌握することになっています。ヘックスタとしてもそんなことをすればマイソシアがどういう事態になるか分かっているのです。ですが、私の座を空位のままにしておけないのもまた事実なのです」
 セイリュウはここまで聞いておおよそ把握したようだ。
「なるほどね。あなたが何とかして帰るための一つの方法として、セオは神託で『水鏡』に触れたのね。デムピアスがそれを聞いてここに来て、そして私に水鏡を出させるように……。そうすることで水鏡の次元に歪が生じて鏡から抜け出ることが出来るかもしれない、出来なかったとしても鏡の所持者である私が何とかしてくれるかもしれないと考えたんでしょう?」
「ということは、僕はまんまとセオ神の思うように動いたというわけだ。まぁそれ自体は別にいいんだけど、もしも僕が御神託を聞かなかったらどうするつもりだったんだろう?」
「賢者よ、セオはその心配はしていなかった。お主がセイリュウ様と契約を交わした賢者を継ぐものであることなど我等は皆知っていることだ。それに、お主の立場の所まで今回のような大事の話が行かぬことなどないであろう?」
「確かにそのとおりです。お見通しと言うことですか」
「我々は汝らの神ぞ。当たり前だ」

「で、ミュレカン。結局そこから出られないわけよね。どうするの?」
「はい、後はもう、人に託すしかありません。どうすればいいのかはセオが人に知らせているはずです」
 ミュレカンはそう言うと僕を見た。分かっているんだろうな、と言わんばかりの表情だ。まぁ言われるまでもなく僕だって大体話は見えてきた。
「それがつまり、『これをもって帰らざるならば』以下のことですね。でも、セオ神はミュレカン神を呼び戻すときに同時にデスが現れることを告げています。これはなぜでしょう? セオ神はなぜデスが一緒に現れると分かったのでしょう?」
セオが契約を交わしているアフラマズダという御名の神に尋ねたそうだ。どうやらデス様は人の世界に降臨するつもりであるらしい、そしてマイソシアを死の土地に塗り替えようとしているということだよ。だから賢者よ、先ほども言ったがスオミの水詠みの冒頭の凶兆とはおそらくこのことを指している。そしてセオは、私がここから出ることは出来なかった場合にはマイソシアの人間に霊媒の術を用いさせて私をこの封印から連れ戻させようとしている。霊媒の術は人のみが行使できる力だからな。この術は次元を無視した術であるため私を人の次元に呼び戻すことが出来るだろう。そうすれば私も元の世界に帰ることが出来る。だが、このときにこの水鏡の次元と霊媒師が繋がる。デス様はそこを利用してマイソシアに降臨するつもりらしい。もちろん、そんなことを狙われていると分かっているのであれば私をこのまま封印されたままにしておけば、デス様はマイソシアに向かうことは出来ない。だが、そうなると今度は善悪のバランスによって成るマイソシアが根底から崩壊を始めることになる。だから、事がここに至ってはもはやセオの語った通りに進め、デス様にはなんとしてでもお帰りいただくしか方法はないのだ」
「んー……セイリュウ、教えて欲しいんだけどデスはなんでこんな回りくどいことをするんだろう?」
「私達は賢者や使者等との契約がない限りどんなにがんばっても直接マイソシアには行けないのよ。デスだって同じ。ただし次元を無視する霊媒の術によって作られた道があれば人の世界に行くことが出来る。なぜこうなっているのかということは残念だけどあなたには話せないわ。ついでに言うとね、話がここまで判明したんだから私とかセオの契約しているアフラマズダとかに頼んでデスを止められないかと考えるでしょうけど、それも出来ないの。あまり詳しくは言えないけど、基本的に私達は対立を宿命付けられていない限り互いの行動に干渉してはいけないの。しかも、デスは他の誰とも対立を宿命付けられていない特別な存在。死は全てに平等だから……」
「そうか……多分、すべて繋がった」
 セイリュウは僕を見て微笑んだ。
「よかったわね。私も来てあげた甲斐があったというものよ」
 
 
 

 

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WEB拍手
作者がお話を書く活力になります。何卒m(__)m
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